愛が壊れた時、策略御曹司の罠に堕ちていく
『あー、蓮、お願い。お願いします、蓮さま』
両手を擦り合わせ、片目を閉じながら見上げてくる。
彼女と俺の間にあった壁が崩れた気がした。
彼女に初めて名前を呼ばれた。
そして呼び捨てにされたことに、喜んでいる俺。
『呼び捨てかよ…ふっふふ』
『ダメ?』
『ダメじゃない』
嬉しい、嬉しい、名前を呼んでくれた。
ただ、それだけのことなのに嬉しいと思う。
恋に浮かれる男をバカだと思いながら見ていたが、自分も、恋に浮かれるそこいらの男と同類だったようだ。
『…さぁ、行こうぜ』
途中、麗華と兄貴の帰りを心配した彼女だが、『邪魔なんてしたら、麗華に会えなくなるぞ』と脅してやると素直に帰ると言いながら、どこか緊張気味の表情で車に乗ってきた。
密室で2人きりということに気がついたようだ。
緊張で肩に力を入れている彼女。
俺を意識していてくれることが嬉しい。
無理に話す必要もない。
彼女と2人きりのこの時間を、BGMを流して過ごしていく。
俺の頭の中は、彼女を得る為に策略を巡らせているなんて想像もしていない彼女は、景色を眺めているうちに緊張が解けたようだった。
今はまだ、これでいい。
彼女の心には遼しかいないから、必ず、彼女の心から遼を排除してやる。