愛が壊れた時、策略御曹司の罠に堕ちていく

嬉しがる声に、こちらも笑顔になる。目の前に立つ男は、俺の笑顔に頬を引き攣らせていた。

新店舗の店長になる銀縁メガネの男だ。

勝手に決めてと、レンズの向こうの視線が言いたそうに見つめていたが無視を決め込む。

『詳しい内容は、後で送る。菜穂、うちを選んでくれてありがとう』

どさくさに紛れて、彼女の名前を初めて呼べた。

呼んでしまうと、今までためらっていたことが嘘のように、簡単だった。

『…うん、こちらこそありがとう』

(副社長)

『…じゃあ…またね』

『…あぁ…またな…』

電話を切り、目の前の空気を読めない男を見上げた。

『話を続けろ』

その声は、彼女向けた優しい声とは違う統治者に切り替えた声だ。

忙しく会えなくても、彼氏の遼より、彼氏らしく頻繁にメールや電話をこまめにとった。新店舗の準備で、遼と会う暇もないだろう彼女は、案外、楽しそうにバイトに勤しんでいる。

遼も、入院するまでの大怪我までいかなかったが、残念ながら車が大破し、腕と鼻の骨を骨折したと噂で聞いた。その瞬間、ザマーとほくそ笑んでいた。こちらも、事故ったなど彼女に知られたくないだろう。

プライドがあれば怪我が治るまで、連絡を取ることはないだろうと予測している。
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