愛が壊れた時、策略御曹司の罠に堕ちていく
『遊んでいた女を妊娠させるなんて、バカだな。まぁ、元気出せ』
俺が仕組んだこととはいえ、あいつを殴らなきゃと立ち上がったが、菜穂の表情は、晴れ晴れとしていて首を左右に振り(大丈夫だから)と唇を動かした。
『先に帰ってて』
決意したように笑顔になる菜穂は、隣の部屋に入って行った。
『入るね』
そっと聞き耳を立てて様子を伺う。
『…な、ほ。どうして?』
『どうして?そうね。今日は、私の誕生日で友達とお祝いにきてたの』
『そうなんだ。誕生日か、おめでとう』
『ありがとう。遼も結婚おめでとう』
『えっ、菜穂、その…説明するから、落ち着け』
聞かれていたと悟った遼は、弁明しようとしているらしい。
『私は落ち着いてるわ。説明もいらない。ただ言わせて…サイテー男。EDになってしまえ……』
もう、菜穂の心には遼はいなくなったようだ。俺は、一足先に、店を出て彼女を待った。
『帰らなかったの?』
『泣きそうなお前を1人残して帰れるかよ』
『あ、りがとう…』
誰もいない空間で、そっと彼女を抱き寄せ頭を撫でていく。
『泣き止むまで胸を貸してやる』
俺の胸で泣き崩れる菜穂を静かに抱きしめたまま、上を見上げ、頬を緩めたのだった。