愛が壊れた時、策略御曹司の罠に堕ちていく
甘い罠に堕ちて
私が愛し、信じていた男は、もういない。

恋した時から美化し過ぎ、彼の本質が見えてなかっただけ。

この時になって、以前、蓮が言った言葉が思い出される。

「見えているものだけが全てじゃない」

本性を知り、別れてすっきりとしている…そのはずなのに、涙が出て止まらないのは…。

決して、別れた悲しみではなく、未練があるわけでもない。

悔しくて
ムカついて
見る目の無さに呆れているせいだ。

今は、胸を貸りて、静かに慰めてくれている存在に救われている。

地下駐車場に着いても泣き止まず、困ったであろう蓮は、車まで肩を抱いて後部座席に入るようにとドアを開けた。それから背中を押して、反対側から自分も乗ってきた。

呼び戻されて待機していたであろう運転手に合図して、車がゆっくりと動きだす。

蓮は何も言わず、ただ、抱き寄せているだけ。

静寂の中、啜り泣く声だけが聞こえていた。

家までの距離が、いつも以上に時間がかかっていたのは、運転手の配慮でわざわざ遠回りしていたからだろう。

停車して、涙を指の腹で拭き取る。車から降りた蓮が、こちら側のドアを開けていた。

「送ってくれてありがとう」

「俺が送りたかっただけだから、気にするな」
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