ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
プロローグ


私を微塵も女扱いしてくれなかったその男は、ぎらついた目をこちらに向けて、ようやく本性をあらわにした。

「本当にいいんだな?」

尋ねながらもその言葉には有無を言わさぬ圧力があって、彼の腕の中からもう逃れられはしないのだなと直感する。

「泣いても引き下がってやらないぞ?」

「できるものならどうぞ。()かせてみてください」

せめてもの抵抗に虚勢を吐けば、彼は口の端をゆっくりとつり上げ、唇に色気を纏わせながら「言ったな」と挑発に乗ってきた。

私、茂木野涼羽(もえぎのすずは)は二十二歳にして、十六も年上の男に嫁いだ。いわゆる政略結婚だ。

『あんたは年の離れたオッサンをあてがわれた、かわいそうな女の子だ』とは彼の言葉。私も始めはそう思っていた。

だが、実際に彼と接してみて、そこまで嫌悪感を抱かなかったのは、歳の差以上の魅力を彼が備えていたからだろう。

男らしくも気品が感じられる甘いマスク、一八〇センチを軽く超える長身、すらりとした四肢、シャツの上からでもはっきりとわかる逞しい体つき――これについては、このあと実際にシャツの下を確認するはめになりそうだが。

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