ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
「そういうことじゃ、なくてですね……」

うまく言葉にできなくて一歩後ずさる。

知らない女性の香りなんて纏ってほしくないと、素直に言ったら笑われるだろうか。

お前には関係ない、指図されるいわれはないと、一蹴されてしまうだろうか。

「なんでもないです」

逃げるように背中を向けると、すかさず腕を掴まれた。

「涼羽。なにか勘違いしているだろ」

私を強く引き寄せ、自分の胸の中に押し込む。

彼が日頃から纏う煙草の苦い香りと、甘ったるい残り香が混じり合う。

どこかで誰かとそうやって交わってきたのだろうか――そんな妄想をかきたてる匂いにうんざりする。 

「離してください」そう主張するも、彼は腕を解いてくれない。

近くにあったソファに、私を抱きかかえたまま腰を下ろした。

「だからっ……早くシャワーに行ってくればいいと――」

「まあ聞け」

私を膝に座らせて、彼が落ち着いた声で説明を始める。

「接待のメリット一、相手の警戒心が緩みやすい。会議室では聞けない言葉――私情が絡んだ本音や、公の場では口にできない裏事情が聞ける」

「は?」

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