ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
第七章 十六も下の若妻に絆されている
親父から政略結婚を命じられたあの日、彼女――茂木野涼羽は沈黙を貫いた。
玉の輿目的の女なら俺に媚びのひとつも売っただろう。婚約者を次男から長男に挿げ替えられたところで、メリットの方が大きいのだから喜んで縁談を受けたに違いない。
しかし、涼羽は違った。惺也を蔑む親父を黙ったままじっと見据え、怒りを堪えて唇を引き結ぶ姿を見れば、その意思は明白だった。
彼女は権力が欲しいわけじゃない。親に命じられるがまま、好きでもない男に嫁がされる。
そんな中でも惺也にそれなりの好感を抱き、この人に嫁ごうと心を決めていたのだろう。
惺也も、彼女のことを気に入っていたようだ。普段は父親に意見しないあいつが異議を唱えたのがその証拠だ。
そんな想い合うふたりを、俺が引き裂いてしまった。
親父の横暴が元凶であることには間違いないが、なんの手立ても講じず、結婚を引き延ばしていた俺にも落ち度はある。
……また恨まれちまったな。
惺也が俺を快く思っていないのは知っている。
あれは勤勉だが不器用な男だ。一般的には秀才の部類に入るが、舘華家、延いては舘華興産を牽引できるかといえば心もとない。