ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
そうフォローしながら、ソファの前に佇む私のもとにやってくる。

「それより、なにかされなかったか?」

「はい、なにも」

「そうか。よかった……」

安堵の表情を見れば、よっぽどの心配をしていたのだとわかる。

康惺さんと惺也さんは、ただ仲のいい兄弟というわけではないのかもしれない、私はようやくその事実に気づく。

ひと口も飲まなかったコーヒーとお茶請けをトレイにのせてキッチンに運び、後片づけをしていると。

ふと康惺さんがソファの方を見て「ん?」と声を上げた。

「どうかしましたか?」

「ゴミが落ちて――」

そう言いかけて座面の上のゴミを拾おうと腰を屈めた康惺さんが、ぴたりと動きを止める。

「康惺さん?」

「……いや。なんでもない」

なにかを拾い上げてくしゃりと手の中で丸める。そのままリビングの端にある蓋つきのゴミ箱の中に捨てたようだった。



◇◇◇



【惺也さんがいらっしゃっています。いつ頃、帰宅されますか?】

そんなメッセージに気づいたのは、山崎さんが用意してくれた会食の場でのことだった。

< 204 / 257 >

この作品をシェア

pagetop