ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
「世話になったお礼を持ってきただけだよ」
惺也さんの視線を辿りダイニングテーブルに行きつく。そこにはワインとチーズの入った紙袋がふたつ。
「こんな気遣いはできるのに、アポイントは取れないのか?」
「出来の悪い弟で申し訳ない限りだ」
惺也さんがにっこりと笑ってソファから立ち上がる。
「兄さんの顔も見られたし、帰るとするよ。涼羽さん。おもてなし、ありがとうございました」
「は、はい……」
あまりにも急な成り行きに頭が追いつかない。
リビングを出ていく惺也さんのあとを、康惺さんが追いかけていく、そんなふたりのうしろ姿を見つめて立ち尽くした。
しばらくすると、見送りを済ませた康惺さんがリビングに戻ってきた。
その表情には警戒心が色濃く滲んでいて、私はおずおずと声をかけた。
「勝手に家に上げて、すみませんでした……」
兄弟なので問題ないだろう、そう軽々しく考えていたが、わざわざ会食を切り上げてまで帰ってきた様子を見るに、まずかったのだろう。
「いや、いい。もし涼羽の肉親が尋ねてきたら、俺も同じように上げていただろうしな」