ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
第十章 もう幸せなんて祈らない


年始の慌ただしさがようやく落ち着いてきた頃。またひとつ私たちを驚かせる出来事が起きた。

茂木野不動産と舘華興産の窓口をしている野口さんから急遽アポが入ったのだ。

早急に確認したい件がある、可能であれば本日にでも時間を取れないか――そう打診され、私たちは社長のスケジュールを急遽こじ開けた。

非公式の意見交換にとどめたいとの要望があって、双方の代表が一対一で話す形になった。つまり、父と康惺さんだ。

それにしても、急すぎて違和感を覚える。

昨晩も今朝も、康惺さんはなにも言っていなかったし、なにかを隠している様子もなかった。

……悪い内容でなければいいのだけれど。

そして約束の時間。案内係を任された私が受付ロビーで待っていると、そこにやってきたのは思いもよらない人物だった。

「お久しぶりです。涼羽さん」

そう涼やかに微笑んだのは、ライトグレーのスーツに身を包んだ惺也さんだ。会釈に合わせて、眼鏡のシルバーフレームがきらりと光る。

隣には申し訳なさそうな顔で佇む野口さんがいた。

状況がさっぱりわからず混乱しながらも、私は「ご無沙汰しております」と挨拶をする。

「本日のアポイントは惺也さんが?」

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