ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
避妊具の空袋が落ちているのを見たとき、すぐに惺也の挑発だとわかったが、それでも一発殴ってやりたい気分になった。

「少しは動揺してくれた?」

「しない。お前の浅はかさには存分に呆れたけどな」

語気を荒げると、さすがに反省していたのか「悪かったよ」と神妙な様子で口にした。

「涼羽さんに言われて少しだけ納得できた。面倒見がいいとか、辛抱強く見守るとか、思い当たる節があったから」

惺也の歩調が緩くなる。

どうやら涼羽のあのはた迷惑な説教が多少は効力を発揮していたらしい。居心地が悪くなり、首筋に手を当ててごまかす。

「お前、涼羽のこと――」

本当に想いを寄せていたのか、そう尋ねようとすると、惺也は自嘲気味にかぶりを振った。

「そういうんじゃないよ。ただ父の勝手で僕のものが兄さんの手に渡ったのが許せなくてムキになっていただけだ。巻き込んだ涼羽さんには本当にすまなかったと思っている……」

心から反省した様子にこれ以上、責める気にもなれず肩を落とした。

涼羽を巻き込んだことだけは許しがたく思っていたが、この様子を見る限り、もう二度と彼女に手出しはしないだろう。

「申し訳ないと本気で思ってるなら、お得意の賄賂で涼羽に贈り物のひとつでも送ってやってくれ。あいつは素直に喜ぶから」

「喜んでもらえるなら、いくらでも」

専務室の前で俺が足を止めると、惺也はこちらを振り返り、わずかに頬を緩めた。

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