ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
「それは困ります。私が無能者扱いされるじゃありませんか」

「周りの人間にどう思われようがかまわない。放っておけ」

彼の目が幾分か真剣になる。その言葉だけは本音であるとわかった。

「家督は弟に譲るつもりだ。俺は本当に跡を継ぐ気がないんだよ」

「それでも、あなたの子を産まなければ、茂木野家のメンツが立たないんです。両親や家業に関わる人たちの人生がかかっている。あなたならこの重み、わかりますよね?」

わからないと言うような放蕩息子なら話にならないが。幸いそうではなかったらしく、彼は否定せず、再び鬱陶しそうに私を押しのけた。

「そうまでして他人が大事か? あんたの親も親だ。娘を知らない男に売り飛ばすなんて」

きゅっと奥歯をかみしめる。

父だって好きで私に結婚を勧めたわけではない。

それに娘を任せる男が信用に足る人物か、下調べはしてくれている。もしも惺也さんや康惺さんに『女遊びが酷い』とか『金にだらしがない』などの悪い噂があったら、縁談を断ってくれていただろう。

「私のことは好きに罵ってくださってかまいません。ですが両親を――茂木野家を貶めることは許しません」

「……まったく」

< 33 / 257 >

この作品をシェア

pagetop