ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
彼の家は、二カ月近く前のあの状態からほぼ変わっていないように見えた。

違うのは、リビングのローテーブルの上に灰皿が転がっているのと、そして部屋にほんのわずかに苦い香りが漂っているくらいだろうか。

彼はそれを片付けながら「だから言っただろ」と少々不機嫌になる。

「お気になさらず」

父も昔は煙草を吸っていたので、私自身はそこまで喫煙者に対する抵抗はない。

「俺が気にする」

もしかして、来客時は煙草を控えるポリシーでもあるの?

変なところで紳士である。

「で。なんの用だ」

彼がソファにどっしりと腰を据える。目で正面に座れと促されるも無視し、私は彼の隣に馴れ馴れしく座った。

「なんのつもりだ」

「私と子作りしてください」

「……近頃の若者は大胆で恐ろしいな」

呆れたようにそっぽを向く。私は「誤解しないでください」と両手で彼の頬を挟み、無理やりこちらに向かせた。

「好きでこんなことしてるわけじゃないです。ただ、私には私の立場というものがありますから」

毅然とした態度で彼を見つめると、眉をひそめて手を振り払った。

「言っただろ。うちの親父の言うことを真に受けるな。子どもは作らなくていい。適当に言い訳しておくから問題ない」

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