ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
たぶん、彼の顔に胸を近づけたときのことを言っているんだろうけれど……あの行動はさすがに目にあまったらしい。

「いえ……そんな、私は……」

「言い訳は聞きたくない」

ふう、と嘆くように息をつく。

「相応の処分が下ると思ってくれ」

悔しそうに奥歯をかみしめる蛯原さんに、背を向けて歩き出す康惺さん。

なぜか手は私の肩に回ったままで、庇われるように引き寄せられる。

「そうだ、もうひとつ」

なにかを思い出したのか、康惺さんがもう一度、肩越しに振り向いた。

「お前が視察でマンションを訪れたとき、まだルーフバルコニーが完成していなかっただろう。ペントハウスのリビングからの眺めは、お前が知るのと今とでは全然違うぞ」

……視察?

顛末を聞いて目を丸くする。あのペントハウスには、康惺さんに呼ばれて行ったんじゃなくって、仕事で行っただけだったんだ。

なんだか妙に気が抜けて、肩を落とす。

しばらく歩いたところで周囲に誰もいないことを確認し、私は隣を歩く彼を見上げた。

「随分前から会話を聞いていたみたいですね。もっと早く助けに入ってくれてもよかったんじゃありませんか?」

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