ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
私が蛯原さんに反論する前に止めてくれていたら暴力沙汰――未遂ではあるけれど――にならずに済んだのだ。

彼は「バレたか」とふてぶてしい笑みを浮かべる。

社長室にいたときのおごそかな面持ちではなく、ルーフバルコニーで煙草をふかすときの顔をしていて、どこかホッとする自分がいる。

「あんたがなんて答えるのか、聞いてみたかったんだ。なかなかおもしろい回答だったぞ」 

私の反論はどうやらお気に召したらしい。試さないで欲しいものだけれど。

「それにしても、どうしてここに?」

「一服しようとしたら迷子になって」

ひょいっと肩を竦める康惺さん。まさか本当に迷子になったわけではないよね?

……様子を見に来てくれたの?

私と蛯原さんの間でなにか起きるかもしれないと察したのだとしたら、なんて勘のいい人だろう。

私は「ありがとうございます」とお礼を告げておく。

すると彼は緩い笑みを浮かべたまま、その大きな手を私の頭の上にのせた。

なだめるように撫でられて、どう反応したらいいのかわからなくなる。

「今夜、うちに来い」

不意に切り出され、私は目を丸くする。

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