ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
「同じ時間に……は至って普通な気がしますけど。同じようなもの?」

彼の実家ならシェフくらいいるのではないだろうか。同じようなメニューを毎日出すとは思えないのだが。

彼は「全部同じに見えてたって意味だ」と補足する。

「贅沢な話だが、小難しいフレンチだの懐石だの出されても、子どものうちは全部〝よくわからない料理〟だろ?」

ああ、という驚きと納得と。きっと彼は小さいうちから食の教養やテーブルマナー教育が始まっていたのだろう。

子どもが好きなハンバーグとかラーメンとかカレーとか、そういったメニューは出てこなかったのかもしれない。

「ひとりで暮らすようになって、食べたいときに食べて、食べたくないときは食べなくていいんだと知った。すっきりしたよ。世界が明るく見えた」

……食べたいときに食べる。たったそれだけなのに、彼はそこに〝自由〟を感じたんだ。

私には想像もつかない苦悩を抱えて生きてきた人なのだと知る。

「それからは気が向いたことだけやるようにしている。……選択肢が俺にあるものに関しては」

最後に付け加えられたひと言に、彼の不自由さを否応なく感じた。

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