ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
「で、効用関数にさっきの座標を入れると?」

「消費点を通って……こういう曲線?」

問いに答えると、彼の口もとがにいっと弧を描いた。すかさず、彼の大きな手が頭の上に振ってくる。

「ちょっと賢くなったな」

問題が解けた喜びと、どこか子ども扱いされている気恥ずかしさがせめぎ合い、素直には喜べない。

でも嬉しいのは確かで、笑みを噛みころしながら「ありがとうございます」とお礼を告げる。

苦手だった計算問題が、彼のおかげでほんの少しだけ好きになれた気がした。



十一月も半ばを過ぎると、実家の玄関先の楓は綺麗な朱に色づいていた。

ひとり暮らしを始めたあとも、月に二、三度は両親の顔を見に実家に戻ってきている。まあ、父とは毎日職場で顔を合わせているから、母の顔を見に、と言った方が正しいのかもしれない。

そんな私だが、ここ一カ月近く顔を出せずにいた。

理由は単純、康惺さんと本当に一緒に暮らし始めたからだ。毎日がどことなく慌ただしくて、戻る機会を逃していた。

ひとりで過ごす時間が少なかったこともあって、寂しさを感じる暇がなかったのかもしれない。

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