恋とは、一体どんなもの?
あれから約二十年。成人すれば、人生でそう何度も遭うものではない悲劇の順番が、私の元には律儀に巡ってくることにも慣れてしまうものだ。
「心綸、もう、またこんな所で寝て!」
ほんのりと、脳の裏側に光が差し込むような感覚があった。ゆっくりと上体を起こすと、うんと背伸びをする。
「……んん……、おはよぅ、凪智い〜」
「おはよう、じゃなくてもう夕方の五時。院生室のデスクで爆睡しないで」
「ええ?五時?よく寝た〜……」
「はあ……心綸は無防備すぎるのよ」
「んふふ、凪智がセコムしてくれるから良いんだ〜」
「まったくもう……危ないって何度言わせるかな、この子は〜」
凪智はわたしの額を、ぺし!っと軽く叩くと、デスクの上に脈絡なく散らばった資料を、手際よくまとめ始めた。わたしの防犯意識の低さに辟易しているのだろう。けれど、私にだって言い分はある。
「でもここ、鍵付きだよ?」
「鍵付きでも危ないものは危ない。心綸、あんた自分が思ってるよりずっとずーっと可愛くて隙だらけなんだからね」
凪智は心配性だ。6年近く一緒にいるけれど、彼女はいつも、私が自分を差し出すよりも少しだけ真剣に、私のことを心配する。