恋とは、一体どんなもの?
「そんなにかなぁ……」
首を傾げていると、凪智はまた呆れたようにため息を落とした。
「この前だって、知らないおじさんについて行きかけたでしょ」
じろり、咎めるような鋭い視線を向けられる。
「あれは、道を聞かれただけだよ」
「途中からなぜか重い荷物持たされて、一緒に歩いてたじゃん!」
「だって、すごく困ってそうだったから……」
「そういうとこ! 他人の事情にすぐ首を突っ込むとこが危ないって言ってるの!」
静かな院生室に、凪智の硬い声が響く。向かいの席の先輩が、パソコンの画面に隠れたまま肩を震わせて笑っていた。いたたまれない。
「……でも、悪い人じゃなかったよ」
「それは結果論!」
「あぅ……」
ぴしゃりと言い切られ、それから凪智は、四角く固まった息を吐き出すようにはあ、と深い溜息をついた。
「下着泥棒の件があってから、こっちは余計心配なんだから」
その言葉が、私の胸の最も柔らかい場所に刺さってしまう。自分の不可侵の領域を塗りつぶされたあの感覚を思い出すだけで、肺の酸素が薄くなり、呼吸が浅くなる。
大丈夫。……大丈夫。
右の手首を撫でて、心を落ち着かせた。