ふたつの時を、重ねていく【『ふたつの弧が、重なるとき』番外編/不定期更新中】
 ◇

 ハーフタイムが終わる少し前、美絵が同期の女子たちと連れ立ってお手洗いに向かった。
 私は、前の席の背中をつつく。

「祥太郎くーんっ?」

 弾む声で呼ぶと、彼はだいたい何を言われるか想像がついている顔で、ゆっくりと振り返った。

「……はい」

 私はイシシと歯を見せて笑う。

「さっき、めちゃくちゃ妬いてたでしょーっ」

 美絵も先輩もいないのをいいことに、容赦なくさっきの事件を掘り返す。

「祥太郎くん、角が立つからとか考えて、自分じゃ言えなさそうだなと思って。私が助け舟出してあげたんだからねっ?」

 恩着せがましく、大袈裟にウインクしてやる。

「うわっ。いずみん、優しーっ!」

 すぐ近くにいた正人くん(通称・まさとん)まで、『楽しそうな話題だ』とわざとらしく目をキラキラさせて乱入してきた。

「それは……どうも」

 祥太郎くんがさらりと流そうとするのを、まさとんが逃さない。

「まあっ、祥ちゃんはいつもヨッシーの前では『余裕のあるスマートな彼氏』を演じるために、並々ならぬ努力をしてるからな! フォローは俺たちに任せろっ」

 ビシッと敬礼して茶化すまさとんに、祥太郎くんは「だから、『祥ちゃん』って呼ぶな」といつものツッコミを忘れない。

「なんの話ー?」

 そこへ、お手洗いから戻ってきた美絵が楽しそうに覗き込んでくる。

「ふふっ。なんの話だと思うー!?」

 悪戯っ子の顔でさらに話をかき回そうとする私を、祥太郎くんは苦笑しながら「ハイハイ」と片手をヒラヒラさせてあしらった。
 すると、それを見た美絵が目を丸くする。

「あっ……ズルい! 私も祥ちゃんに、そういう雑な対応されたいのにー!」

「え、なんで?」

 本気で困惑している祥太郎くんをよそに、私は思わず吹き出してしまった。

(祥太郎くんは美絵のことが大事すぎて、甘い対応しかできないんだよね)

「ほんと、可愛いカップルだなあ」

 そうこうしているうちにブザーが鳴り響き、後半戦の試合が再開した。
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