ふたつの時を、重ねていく【『ふたつの弧が、重なるとき』番外編/不定期更新中】
 ◇

「うーん、なんかしっくりこないんだよね……」

 夜、家に帰ってからも、素人なりに紙へ書き殴ったラフ案やメモと、睨めっこしていた。

 無表情で焚き火の前に誘う『無になろ』や、プルプル震えながらダンベルを持ち上げる『こうするとあったかいよ!』など、いくつか描いてみたけれど、決め手に欠ける。

「どれも可愛いけどね」

 上から覗き込んだ祥ちゃんが、そう言ってくれた。

 私は今、贅沢にも――大好きな夫に膝枕をしてもらいながら、アイディア出しの続きをしているのだ。

 この幸せな『膝枕タイム』は、毎晩のルーティンになりつつある。
 時々「今日は私が膝枕する」と申し出るものの、祥ちゃんは落ち着かない様子で「重いでしょ」などと言って、すぐに退いてしまう。

「久しぶりにこの子のスタンプ企画だから、『これだ!』って思えるもので進めたいんだ」

「美絵が昔から大好きな子だもんな」

 視線の先、キャビネットの上には――そのウサギのぬいぐるみが、ちょこんと座っている。

 小学生の頃に買ってもらったもので、上京する時に実家から連れてきた。
 このキャラクターは私がずっと愛してやまない存在であり、今の会社を志望したきっかけであると言っても過言ではないくらい、強い思い入れがある。
 どのキャラクターにもリスペクトや愛情は持っているけれど、やっぱりこの子は特別である。

 内定の電話をもらった直後なんて、嬉しさのあまり文字通りピョンピョン跳ね回ったほどだ(部屋に一人でいる時でよかった)。

 その後、同じタイミングで別の企業に内定が決まった正人くんも交え、祥ちゃんがお祝い会を開いてくれたのだが――あの日は浮かれすぎて、人生で一番酔っ払ってしまった。
 調子に乗って「祥ちゃん! チューして!」と迫り、見たこともないほど目を見開いた祥ちゃんが「はあ!?」と固まっていたこと。
 そしてその横で、正人くんがお腹を抱えて大爆笑していたことだけは、覚えている。
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