ふたつの時を、重ねていく【『ふたつの弧が、重なるとき』番外編】
「ダメだ、オールだ。俺の言う通りにせよ」
『ええ……体内時計狂うんだけど』
大学生らしからぬぼやき。
「前に行ったときは、俺の歌で号泣させてスッキリさせてやった恩があるだろ?」
『……ちょっと語弊がある』
隣にいるヨッシーに過去の失態がバレたくないのか、控えめに否定してきた。
つい、笑ってしまう。
ふと視線を上げると、ガラス戸の向こうに次のお客さんの姿が見えた。
「じゃ、そういうことで。二人とも気をつけて帰ってこいよ!」
そう言って、半ば強引に通話を切った。
「いらっしゃいませ!」
ガラス戸が開くと同時に、いつも通りの快活な声を、店内に――そして、自分の耳の奥へと響かせたのだった。
―― 終 ――
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