私は‪‪✕‬‪✕‬を知らないⅢ【毎週水曜更新中】

30章.言葉

それから黒い車に乗って4区のどこにも属さない病院へと連れてかれた。


何も考えていなそうな顔をしながらも、服から覗く怪我を見て蓮は一瞬で私の置かれていた環境に気付いたのだ。


その病院で入院している間に出会ったのがカイト。蓮とは腐れ縁のようなものだと聞いた。


そして治療を終え蓮の家へと向かった。


こんな子供が深夜を出歩いても無事な理由。


何倍もの歳の差があるであろうスーツを着た大人が深々と腰を折る理由。


それを知るのには時間は掛からなかった。


篠澤組。


この西に本家を構える指定暴力団の名だ。


組の人間だけに留まらず組長を前にしても一切怯まない6歳児。


それが気に入られたのか組長夫婦も蓮も満足気に笑い私を受け入れてくれた。


当時の私には大人の違いなんて分かるはずもなく、ただ蓮の傍に居られるならと肯定し続けたに過ぎないのだが。


それからというもの、滅多なことがない限り蓮とは10分以上離れる事はなかった。


まさに依存と言えるだろう。


母親への依存が蓮に移り変わっただけに過ぎない。


だが受け入れてくれる蓮に甘えその環境に満足していた。


それでも蓮という存在は私にとって全てだったんだ。


たとえ、


人を殺める事も厭わない人生だとしても。





組長夫婦は可愛がってくれた。きっと他の組ではこうは行かないだろう。


しかし相手は裏の人間だ。ましてや裏社会を牛耳る身。


見返りもなく子供の面倒を見るなんざ、そんな甘い話は無い。
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