隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
 華やかな照明が天井を埋め尽くす、東京ジュエリーショー。

 老舗ホテルの宴会場が、特設会場になっていた。


 御堂ジュエリーの広大な展示ブースの片隅で、秘書の田丸が昂輝の背後から静かに忍び寄り、低く耳打ちをする。


「社長、無事に積み込み、車で向かっているとの報告です」
「……そうか」


 昂輝は短く応じ、整然と並べられていくきらびやかな宝飾品に視線を走らせた。


 ブースの中央には、ひときわ目を引く独立した展示ケースが据えられている。

 来場者が四方から囲むようにして、どの角度からでも中央の石を観覧できる特別な作りだ。

 現在、そのケースの中央には頑丈なアタッシュケースが鎮座している。

 開始時間直前に中身を出して展示するとアナウンスしてあるが、ダミーだ。

 周囲の目を欺くため、昨日のうちに持ち込んで厳重に警備させていた。

 本物のサファイアは、今まさに蒼乃たちがこちらへ運んでいる最中である。


 どこに内通者がいるかわからない。

 この工作の事実を知っているのは、昂輝自身と、父親である浩輝、蒼乃と及川、そして目の前にいる田丸だけだった。


「昂輝」


 不意に背後からかけられた声に、昂輝は首だけで振り返る。叔父の敦輝が、ぎらついた目を向けて立っている。


「心の準備は良いか?」


 叔父の脳裏には、あの夜のホテルの写真が鮮明に焼き付いているのだろう。

 七井晶子が不敵な条件を突きつけてきた応接室。あの場に、叔父も同席していた。


 叔父は、昂輝が七井の令嬢と深い関係を持ったと完全に信じ込んでいる。

 今日、会場にやってくる晶子に対して公衆の面前で結婚を申し込むよう、これまで何度も執拗に言い含めてきていた。

 昂輝はその要求を、のらりくらりと言葉を濁しながらかわし続けている。


「プロポーズはしますよ。その時が来たら、ね。……とにかく敦輝叔父さん、七井さんのアテンドはお願いします」
「ああ、任せておけ。お前こそ、粗相のないようにな」


 自分の期待した通りに事が運ぶと確信したのか、叔父は満足げに笑い、機嫌良くその場を去る。

 その背中を見送りながら、昂輝はポケットの中で拳をぐっと強く握りしめた。


 七井晶子の策略に、そのまま屈するつもりなど毛頭ない。

 内に秘めた熱い衝動が、静かに爪を研いでいた。




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