隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~

 蒼乃と輝は、山梨の祖父の家へと、居を移した。

 すっかり腕が回復し現場復帰を果たした祖父と共に、蒼乃は再び、研磨の仕事に励んでいる。

 昂輝の会社の重要なビジネスパートナーとしても認められ、蒼乃は職人として、以前よりもずっと大きな自信と誇りを胸に、充実した日々を送っていた。


 昂輝は、平日は東京で社長業をこなし、週末になると欠かさず山梨の家にやってくる。

 長期の休みには、逆に蒼乃と輝が東京のマンションで過ごす。

 そんな多忙ながらも刺激的な二拠点生活が、今の自分たちの日常だ。


 輝は、家族の誰よりも早くこの生活に馴染んだ。

 山梨の幼稚園ではたくさんのお友達を作り、家に帰れば庭や工房を駆け回る。

 週末が近づくと、カレンダーを見てはパパの帰りを今か今かと指折り数えて待ち、長期休みに東京へ来ると、御堂のお祖父ちゃんの家に行くと言って聞かない。

 曾祖父と過ごす穏やかな自然を愛し、それでいて、父や祖父達と過ごす都会の絢爛さにも物おじせず順応する。

 考えれば考えるほどに、昂輝の息子らしい子だ。




 蒼乃は、御堂の本宅のリビングで声を弾ませる輝を、目を細めながら見つめた。

 いつの間にか、昂輝が蒼乃のすぐ隣に腰掛けてこちらを覗き込んでいる。


「何? さっきからニヤニヤしてる」
「ひどい、ニヤニヤだなんて……幸せだなって、思ってたの」


 蒼乃が頬を少し染めて言い返すと、昂輝は形の良い唇を僅かに緩めた。


「本当?」
「うん。お義父様とお義母様がいて、昂輝がいて、輝が楽しそうで……陽の光がキラキラして、宝石みたいだなって」


 その言葉が終わるか終わらないかのうちに、昂輝の長い腕が、蒼乃の細い肩をそっと、しかし確かな力強さで引き寄せた。

 昂輝が蒼乃をグッと抱き締めると、耳元で囁く。


「俺の人生で一番の宝石は、今もこれからも、蒼乃と輝だ」


 耳をくすぐる低く甘い声と、衣服を通じて伝わってくる彼の深い体温。

 ばあばの作ったクッキーを頬張りながら喜ぶ輝の、突き抜けるように明るい笑い声が風に乗って部屋を満たす。


「ママ、パパ!」


 輝が、二人の間に飛び込んできた。

 差し込む陽光に包まれた三人の笑顔は、世界のどんな希少な宝石よりも、眩しく、そして永遠に輝き続ける。
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