隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
 陽介は何も言わず、ただ静かに蒼乃の言葉を受け止めようと耳を傾けている。


「陽介のことは好きだよ。良い友達だと思ってる。陽介は……大事な友達なの。だからこれ以上、誠実じゃない態度は取れない。つけ込むように甘えちゃって、本当に申し訳なかったと思っています。ごめんなさい」
「つけ込むなんて……」
「陽介みたいな人が輝の父親になってくれたら、すごく、幸せなんだと思う。でも、輝の父親は……あの子の父親は、世界に一人だけなの」


 輝の父親。

 その言葉を口にした瞬間、蒼乃の瞳から、堪えていたものが一気に溢れ出した。

 陽介は小さく息を吸う。
 それから全てを悟ったように、寂しげに、しかしどこまでも慈しむように、ふっと口元を緩めた。


「……前に、会った人?」


 蒼乃は答える代わりに、ただ小さく、深く頭を下げるしかなかった。

 涙が膝の上にポタポタと落ちて、視界が滲んでいく。


「謝るなよ。それに……つけ込んだのは俺の方だ。輝くんをダシに使えば、蒼乃が振り向いてくれるかと思った。ずっと、友達としか見られていないのは、知ってたよ」


 陽介は、蒼乃を責めるような言葉を一切口にしなかった。


「ごめん……っ、ごめんなさい」

 
 陽介はそっと立ち上がる。

 一度だけ、蒼乃の震える肩へ触れようとして、それから、その手を静かに引いた。


「プロポーズ、断られても俺は先生だから。だから、普通に接してくれると嬉しい」


 蒼乃は、大きく頷く。
 その様子に、陽介が小さく笑う声が聞こえた。


「じゃあ、また園でな。輝くん、お大事に」


 パタン。

 静かにドアが閉まる音が、夜の室内に寂しく響き渡る。


 これで良かったのかどうか、蒼乃にはわからない。

 だが、これからは、誤解やすれ違いのない世界で生きたい。

 きちんと、正直な気持ちで、周りの人と向き合いたい。言葉を伝えたい。

 
 蒼乃は大きな決意をすると、スマートフォンを取り出した。
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