隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~



 その日の夜。

 LINEが届いた後、部屋に、コンコン、と控えめなノックの音が響いた。

 ドアを開けると、心配そうに眉を下げた陽介が、スポーツドリンクやレトルトのお粥が詰まった大きなビニール袋を両手に下げて立っていた。


「そうか、それは大変だったなぁ。……ごめんな、何もしてやれなくて」


 輝は再び眠っている。

 小さな座卓を挟み、輝の病状を聞いた陽介は、自分のことのように痛ましげな表情を浮かべた。


 陽介は優しい。
 そのどこまでも献身的な優しさに、そのまま身を任せたくなってしまう自分もいる。
 彼と一緒にいれば、過去のことは考えなくても良いのだ。

 自分のしでかしたかもしれない罪と、向き合わなくても良い……。


「とんでもないよ。いつも気にかけてくれて、本当にありがとうね」


 お礼を言う声が、少し強張ってしまう。

 陽介は蒼乃の様子をそっと伺うように見つめ、それから何かを決意したように、少しだけ身を乗り出した。


「……おれ、泊まろうかな。だって、また熱が上がったら心配だろう。あ、その、変な意味じゃない、うん。もしものときにタクシーや救急車呼んだりさ。蒼乃も一人じゃ不安だろうし」


 温かな、陽だまりのような、どこまでも優しい提案だった。

 彼の手をとれば、この孤独な夜から救われる。輝だって「パパのいない子」と言われずに済むのかもしれない。


「陽介、話があるの」
「……嫌な話?」


 陽介の動きがぴたりと止まる。

 爽やかな笑顔の奥に、微かな諦念のような色が混ざる。

 蒼乃は、察しの良い彼に少し笑ってしまう。


「プロポーズしてくれてありがとう。輝の父親になるって言ってくれて、すごく嬉しかった。心強いし、ありがたいと思った。でも……ごめんなさい。陽介とは結婚できません」


 胸の奥が痛い。
 しかし、陽介はもっと痛いはずだ。

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