隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~

 そこに立っていたのは、祖父だ。

 少し背中が丸くなり、白髪が増えたものの、昔と少しも変わらない頑固そうな祖父、及川匠の姿だった。

 エプロンには細かな銀の粉がうっすらと光っている。


「お、お祖父ちゃん」


 その姿を見た瞬間、蒼乃が必死に堪えていた想いが、一気に崩れる。

 視界が涙でぐしゃぐしゃになり、喉の奥から熱い塊が突き上げてくる。


「お祖父ちゃん、ご、ごめんなさい、私……」
「いいから、中に入りなさい。……さあ、僕もおいで」


 祖父はそれ以上何も責めず、深く頭を下げる蒼乃の肩に、シワの刻まれた温かい手をそっと置いた。

 そして、蒼乃の服の裾を掴んで不思議そうに立っている輝へ、細められた目元をさらに和らげて優しく微笑みかけた。






 工房の奥にある、懐かしい畳の匂いがする休憩場。

 大きな座卓の上には、急いで淹れてくれた暖かいお茶と、地元の和菓子屋のお饅頭が並んでいた。

 輝は初めて見るお祖父さんの白い髭や、しわの刻まれた大きな手に興味津々で、じっと祖父を見つめている。


「まったく、無茶ばかりしおって」


 祖父は湯呑みを置き、深くため息をついた。その声には怒りよりも、深い安堵が滲んでいる。


「ごめんなさい」
「出て行ったのが五年前の初春……四つか」


 祖父の視線が、輝へと向けられた。

 五年前、蒼乃が姿を消した理由はこの子にある。言わずとも察し、その歳月の重さを確かめるような静かな眼差しだった。

 妙な緊張感を含んだ空気を察したのか、輝が不安そうに蒼乃の顔を覗き込んできた。


「ママ……」
「大丈夫よ、輝。怒られているんじゃないの。ママは、お祖父ちゃんに心配してもらっているの」


 蒼乃が輝の小さな手を握り、努めて優しい声で語りかけると、輝は首を傾げた。


「おじいちゃん?」
「そう。だから、輝のひいお祖父ちゃんね」
「ひいじいじゃ。輝くん、ひいじいちゃんと仲良くしてくれるかな?」


 祖父が身を乗り出し、白い髭を少し動かして笑う。

 輝の瞳が、見たことのない新しい家族の登場に、キラキラと輝き始めた。


「ぼくの、ひいじい?」
「そう。輝のひいじい」


 嬉しそうに頷く輝の姿を見ながら、蒼乃は微笑む。

 それから、恐る恐る口を開いた。


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