似た者同士の契約婚 ~結婚しないと宣言した日に出会った相手は、不眠の心臓外科医でした~
「要は、社長の熱にあてられたのよ。会社説明会での熱がすごかったの」
美空が苦笑すると、梨子が大きくうなずいた。
「分かる気がします。私は村上社長を映像でしか見たことないですけど、カリスマって感じですよね。健康のためなら何でもやるぞ! って勢いが格好いいですもん」
「そうね」
すると梨子が美空の耳に顔を近づけて声を潜めた。
「息子さんとは全然違いますよね。正直、私あの人苦手ですもん。ただ偉そうだし。それに元カレのくせに、美空さんの変な噂を否定しないじゃないですか! 最低です!」
梨子に洋介との拗れた話をしたことはないが、噂がデタラメだと信じてくれている。だからこそ洋介への嫌悪が少しあるのかもしれない。
(本当の話をしたら、嫌うどころか殴りかかってしまいそうね)
浮気の噂は真逆だし、無理矢理結婚しようとしてきた。
なんて言ったら、この可愛らしい顔が険しくなるに違いない。
だから美空は同じようにひそひそと「だから異動したいの」と微笑むだけにしておいた。
「そっかー。だったら私、そっちに通いますからね! ここでお金を貯めて、お客として美空さんに会いに行きますからね!」
「ふふっ、ありがとう」
午後は梨子がずっと一緒にいてくれたおかげで、スタッフ達の噂話も気にならなかった。
受付の合間に好きな食べ物の話をしたり、おすすめのストレッチの話をしていたおかげで、あっという間に閉店時間になっていた。
「そろそろレジを締めましょうか。今日は少ししか物販なかったはずだから、すぐ終わるはずよ」
「そうですね。午後はスポーツタオルが二本くらい売れただけですから」
梨子がレジの金額を数えている間、受付前に売られているタオルやプロテインの数を数えていく。
(数は問題なし、と)
美空が数え終わった頃、レジの方から「あれ?」と焦ったような声が聞こえてきた。
「どうしたの?」
「合わない……お金、足りません」
梨子が青ざめた顔で縋るように美空を見た。
「え? ちょっと私も数えてみるね」
美空が急いでレジの金額を数えると、五千円分足りなかった。
(おかしい。こんなに大きな金額が動くはずない)
今日使われたのは、小銭ばかり。扱ったお札はせいぜい千円札だ。お金の取り違えがあったとしても、五千円足りないのは不自然すぎる。
「ど、どうしましょう……」
「仕方ないわ。マネージャーに報告しましょう」
報告に行こうと受付ブースを出ると、目の前から洋介がにやにやと口元に笑みを浮かべながら歩いてきた。
美空が苦笑すると、梨子が大きくうなずいた。
「分かる気がします。私は村上社長を映像でしか見たことないですけど、カリスマって感じですよね。健康のためなら何でもやるぞ! って勢いが格好いいですもん」
「そうね」
すると梨子が美空の耳に顔を近づけて声を潜めた。
「息子さんとは全然違いますよね。正直、私あの人苦手ですもん。ただ偉そうだし。それに元カレのくせに、美空さんの変な噂を否定しないじゃないですか! 最低です!」
梨子に洋介との拗れた話をしたことはないが、噂がデタラメだと信じてくれている。だからこそ洋介への嫌悪が少しあるのかもしれない。
(本当の話をしたら、嫌うどころか殴りかかってしまいそうね)
浮気の噂は真逆だし、無理矢理結婚しようとしてきた。
なんて言ったら、この可愛らしい顔が険しくなるに違いない。
だから美空は同じようにひそひそと「だから異動したいの」と微笑むだけにしておいた。
「そっかー。だったら私、そっちに通いますからね! ここでお金を貯めて、お客として美空さんに会いに行きますからね!」
「ふふっ、ありがとう」
午後は梨子がずっと一緒にいてくれたおかげで、スタッフ達の噂話も気にならなかった。
受付の合間に好きな食べ物の話をしたり、おすすめのストレッチの話をしていたおかげで、あっという間に閉店時間になっていた。
「そろそろレジを締めましょうか。今日は少ししか物販なかったはずだから、すぐ終わるはずよ」
「そうですね。午後はスポーツタオルが二本くらい売れただけですから」
梨子がレジの金額を数えている間、受付前に売られているタオルやプロテインの数を数えていく。
(数は問題なし、と)
美空が数え終わった頃、レジの方から「あれ?」と焦ったような声が聞こえてきた。
「どうしたの?」
「合わない……お金、足りません」
梨子が青ざめた顔で縋るように美空を見た。
「え? ちょっと私も数えてみるね」
美空が急いでレジの金額を数えると、五千円分足りなかった。
(おかしい。こんなに大きな金額が動くはずない)
今日使われたのは、小銭ばかり。扱ったお札はせいぜい千円札だ。お金の取り違えがあったとしても、五千円足りないのは不自然すぎる。
「ど、どうしましょう……」
「仕方ないわ。マネージャーに報告しましょう」
報告に行こうと受付ブースを出ると、目の前から洋介がにやにやと口元に笑みを浮かべながら歩いてきた。