似た者同士の契約婚 ~結婚しないと宣言した日に出会った相手は、不眠の心臓外科医でした~
「やった……! 受かった」
数週間後、美空はパソコンの前で小さくガッツポーズをしていた。
面談の結果、オンライン講師として働けることになったのだ。
Webページには美空の写真が載せられ、すでに生徒募集が開始している。
「すぐに人が集まる訳じゃないだろうけど、第一歩ね」
微笑んでいると、美空のスマホが震えた。見知らぬ番号からの着信だった。
オンライン講師関係の電話だろうかと思って電話に出ると、聞いたことのある声がした。
「あ、美空さん? 仁美です。小野仁美。この間はありがとうね」
「ひ、仁美さん? どうして……」
「ちょっとお願いがあって連絡したの。あぁ、この番号は優斗から聞いたの。家に押し掛けるって言ったら教えてくれたわ」
「何してるんですか……」
こんな人だっただろうか、と困惑していると、仁美は気にもせず、「あのね、協力してほしいの」と伝えてきた。
「協力? 何をです?」
「ほら、健康促進イベントの話! お父様とお祖父様に直訴して、やることになったの」
「え! すごいです!」
嬉しそうな仁美の声に、美空もつられて感嘆の声をあげた。
さすがの行動力だ。
「それで、まずは比較的動ける患者向けに簡単な体操を考案して、好評たったらイベントでやることになったの。だから美空さん、貴女に講師役をお願いしたいの」
「……はい?」
思わず聞き返すと、仁美が電話越しにくすりと微笑んだ。
「貴女、最近インストラクターのお仕事をお休みしているそうじゃない。受付にもいないって、お祖父様が寂しがってたわ」
「それは、小野さんには申し訳ないんですけども……話が見えません」
「だからね、お時間があって仕事がないなら、うちで働かない? っていうスカウトをしてるんだけど」
「病院で、働く……」
今の美空にとって、仕事は喉から手が出るほど欲しい。
けれど病院で働くのは別だった。
(私に働けるの? 病院から逃げ出した私が?)
「駄目かしら? お祖父様も是非って言っていたんだけど……他のお仕事が忙しい?」
「えっと、そうではないんですけど……少し考えてみても良いですか?」
「もちろんよ。でも、あんまり重く考えないで。月一回くらいでも良いし。患者の気分転換に、いつもと違う身体の動かし方を教える軽い感じだから」
毎日働く訳ではない。負担は確かに小さそうだ。
仁美は色々と考えて前を向いている。後押しした手前、応援したい気持ちもある。
「分かりました」
「それじゃあ、また連絡するわ」
「ま、待ってくだい!」
仁美が電話を切ろうとするので、美空は思わず呼び止める。
「あの、すごく良いイベントだと思います。お、応援しています」
講師をやれるかは別として、この気持ちは伝えておきたかった。
すると仁美は黙り込んだ。
何か悪いことを言ってしまっただろうか、と美空が焦っていると、電話の奥から鼻をすする音が聞こえた。
「……ありがと。それに、今までのこと全部、ごめんなさい」
「仁美さん……」
「あー! もう恥ずかしいから切ります。また連絡するから、どうするか決めといてっ!」
美空が何か告げる前に電話が切られる。
それでも美空はじんわりと温かい気持ちになっていた。
(やって、みようかな……)
数週間後、美空はパソコンの前で小さくガッツポーズをしていた。
面談の結果、オンライン講師として働けることになったのだ。
Webページには美空の写真が載せられ、すでに生徒募集が開始している。
「すぐに人が集まる訳じゃないだろうけど、第一歩ね」
微笑んでいると、美空のスマホが震えた。見知らぬ番号からの着信だった。
オンライン講師関係の電話だろうかと思って電話に出ると、聞いたことのある声がした。
「あ、美空さん? 仁美です。小野仁美。この間はありがとうね」
「ひ、仁美さん? どうして……」
「ちょっとお願いがあって連絡したの。あぁ、この番号は優斗から聞いたの。家に押し掛けるって言ったら教えてくれたわ」
「何してるんですか……」
こんな人だっただろうか、と困惑していると、仁美は気にもせず、「あのね、協力してほしいの」と伝えてきた。
「協力? 何をです?」
「ほら、健康促進イベントの話! お父様とお祖父様に直訴して、やることになったの」
「え! すごいです!」
嬉しそうな仁美の声に、美空もつられて感嘆の声をあげた。
さすがの行動力だ。
「それで、まずは比較的動ける患者向けに簡単な体操を考案して、好評たったらイベントでやることになったの。だから美空さん、貴女に講師役をお願いしたいの」
「……はい?」
思わず聞き返すと、仁美が電話越しにくすりと微笑んだ。
「貴女、最近インストラクターのお仕事をお休みしているそうじゃない。受付にもいないって、お祖父様が寂しがってたわ」
「それは、小野さんには申し訳ないんですけども……話が見えません」
「だからね、お時間があって仕事がないなら、うちで働かない? っていうスカウトをしてるんだけど」
「病院で、働く……」
今の美空にとって、仕事は喉から手が出るほど欲しい。
けれど病院で働くのは別だった。
(私に働けるの? 病院から逃げ出した私が?)
「駄目かしら? お祖父様も是非って言っていたんだけど……他のお仕事が忙しい?」
「えっと、そうではないんですけど……少し考えてみても良いですか?」
「もちろんよ。でも、あんまり重く考えないで。月一回くらいでも良いし。患者の気分転換に、いつもと違う身体の動かし方を教える軽い感じだから」
毎日働く訳ではない。負担は確かに小さそうだ。
仁美は色々と考えて前を向いている。後押しした手前、応援したい気持ちもある。
「分かりました」
「それじゃあ、また連絡するわ」
「ま、待ってくだい!」
仁美が電話を切ろうとするので、美空は思わず呼び止める。
「あの、すごく良いイベントだと思います。お、応援しています」
講師をやれるかは別として、この気持ちは伝えておきたかった。
すると仁美は黙り込んだ。
何か悪いことを言ってしまっただろうか、と美空が焦っていると、電話の奥から鼻をすする音が聞こえた。
「……ありがと。それに、今までのこと全部、ごめんなさい」
「仁美さん……」
「あー! もう恥ずかしいから切ります。また連絡するから、どうするか決めといてっ!」
美空が何か告げる前に電話が切られる。
それでも美空はじんわりと温かい気持ちになっていた。
(やって、みようかな……)