似た者同士の契約婚 ~結婚しないと宣言した日に出会った相手は、不眠の心臓外科医でした~
 病院に到着すると、あっという間に小野は運ばれていった。

「大丈夫かしら?」

 美空は待合室で待っていることしかできない。待っている時間は永遠にも感じられた。

(心拍は戻っていたし、声も出ていたわ)

 自分に言い聞かせていると、一人の看護師が「小野さんのお連れの桜井さんですか?」と声をかけてきた。

「小野さん、入院することになりましてご家族に連絡しました。さきほど意識が戻って、桜井さんとお話したいと言っていますのでご案内します」
「はい、ありがとうございますっ」

 案内された病室に入ると、ベッドに座っていた小野が美空を見て「おぉ……桜井さん」と小さく手を上げた。

「迷惑をかけたね。本当にありがとう」
「いいえ! ご無事で良かったです。本当に……」

 鼻の奥がツンとなって声が詰まりそうだった。
 無理矢理笑顔をつくると、小野がくしゃりと微笑んだ。

「桜井さんのおかげで助かったって、このお医者さんから聞いたよ。なぁ?」

 その時、小野の視線の先に人がいることに気がついた。
 白衣を着たその男性は、どうやら小野の担当医のようだ。
 彼は小野の言葉に頷き、美空に微笑みかけた。

「救急隊の方から聞きました。同乗した女性が的確な心肺蘇生をしてくださっていたと」
「そんな……AEDの指示に従っただけです」
「それが出来たことが素晴らしいですよ。さて小野さん、ご家族が来るまで安静にしててくださいね」

 医師が少し険しい顔をして小野に念押しをする。小野は観念したように苦笑しながら頷いていた。

「桜井さん、ジムの皆さんにもお礼を伝えてくれるかい? また回復したらお礼に伺うよ」
「もちろんです。元気になってから来てくださいね。お待ちしてます!」

 あまり長居しても迷惑だろう。美空はそのまま挨拶をして退出をした。
 すると医師も続いて部屋から出てきた。

「桜井さん、少しお時間いただけますか?」
「え? は、はい」

 突然呼び止められ、反射的に返事をすると、彼はスタスタとそのままどこかへ歩いていく。
 仕方なく美空はついていくことにした。



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