あなたに触れたい
人差し指を伸ばして、彼の血管にもうすぐで到達しようとした時。
腕がほどかれた。

「あ」

一瞬の思考停止のあと、逃げなきゃという衝動が脳内を駆け巡り、私は腕を引っ込めようとしたが遅かった。
結城さんに手首を掴まれ、引き寄せられた。
すぐさま見上げると至近距離に綺麗な顔が現れ、私は言葉を失った。
言い訳さえ出てこない。
結城さんは無表情のまま黙って私を見つめている。
まったく声が出ない。

何か、言わなきゃーー

「何しようとしてました?」

結城さんに問われ、青ざめた。

「あ、これは、その」

何も言い訳が浮かばない。

「寝込みを襲う気でした?」

首を激しく振る。

「じゃあ、まさか窃盗?」
「違います!」

ようやく、まともな言葉が出た。

「冗談ですよ」

結城さんはクスクス笑った。

「結城さんが寝ていたので、起こそうとしていたんです。ほら、見てください。私たち以外は居ないんですよ」

結城さんが辺りを見渡した。

「本当ですね」
「みんな2次会に行ったようです」
「そうですか、飲み過ぎたようだ」
「私もさっきまで寝てしまって」

さりげなく離れようとしたが、強く手首を握られる。

「結城さん?」
「で、さっきの質問に答えて下さい」
「答えたじゃないですか、起こそうとしたって」
「嘘ですよね?」
「ほ、ほんとですよ!」
「俺に触れようとしていたように見えたけど」
「それは揺すって起こそうとしてただけですよ、てか離してください」
「離したくないな」

いつもの優しい微笑みからは想像もできないほどの不敵な笑みだった。

「ゆ、結城さん……」
「なんです?」
「どうか離してください」

私は弱々しく言った。
するとふっと手首を掴んでいた力が抜けた。
しかしすぐさま今度は手を掴まれる。

「!」

そして、そのまま私の手の甲を結城さんの唇に持って行かれた。

まさかのキスーー

私を見つめながらする、そのキスに妖艶さを感じ、私の心臓は今まで聞いたことないほどドクドク言っていた。

「なんで、そんなこと」
「嫌ですか?」

嫌と答えるべきなのに言えない。
だって嫌じゃないから。

「これから2人だけで二次会します?」
「え?」
「行きましょう」

結城さんはそう言うと私の指に自分の指を絡めて恋人つなぎをした。
そして引っ張っていってしまう。
私はされるがままだった。
このまま、何処に連れて行かれるのか、期待せずにはいられなかった。
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