あなたに触れたい
翌朝、目が覚めると私はホテルのベッドの上にいた。
飛び上がるようにして起き上がると激しい頭痛がした。

「痛っ、つぅー」

こめかみを押さえながら、周りを見渡すとベッドサイドにメモが置いてあった。

『会社は午前休にしておくから、ごゆっくり。朝食はルームサービスを頼んでおきました。 結城』

私は口元を両手で覆い、息を吸い込んだ。

(どうしよう、私、結城さんと!?)

何も覚えていない。

その時だった。
部屋のチャイムが鳴った。
きっとルームサービスだろう。
私はベッドから出ると、そこで初めて自分がしっかりと服を着ていることに気がついた。
ホッと胸を撫でおろす。
彼とは何もなかったーーはずーー
再びチャイムが鳴らされて我に返った。

ルームサービスの朝食はここが結構な高級ホテルであることを思わすような内容だった。

「おいしい」

食欲がないと思っていたのにいざ目の前にすると、急激にお腹がすいて自分の神経を疑った。

「残したら、もったいないよね」

空気に言って罪悪感を少し減らし私は朝食をたいらげた。
食後のコーヒーを注いでいるとコーヒーの香りが脳への刺激になったのか、昨日のことが断片的に思い出された。

レストランバーを出た後、結城さんに連れられて、別のバーに来ていた。
そこは私が1人で入ることは絶対に出来ないような高級感のある店だった。
こぢんまりしていてバーテンダーが1人。
ウェルカムドリンクがあるようで、そのお酒のあまりの美味しさにビックリした。

「おいしい!」

私の反応に結城さんがクスッと笑った。

「ごめんなさい、声が大きかったですよね」

思わず口を覆い隠す。

「いいや、あなたの素直な反応って会社にいるときから思っていたけど、見ていて飽きない」

私を見ながら、そういう結城さんに思わずぽっと顔が熱くなった。

その後は、恥ずかしさを紛らわすために飲みに飲みまくってーー

『森田さん、森田さん、起きて……まいったなぁ』

そんな声がした気がしたが、私は瞼を開けることが出来ず、意識が遠のいた。


思わずコーヒーをこぼしそうになった。

そうだ、私、なんてことーー

私はしばらく、その場でうなだれていた。
< 4 / 9 >

この作品をシェア

pagetop