あなたに触れたい
私は大きくため息をついた。
この人が何をそんなにこだわっているのか、意味がわからなかったが、このままでは言うまで逃れられそうもない。
私は一度、ゆっくりを息をすると結城さんから視線を外して答えた。
「血管に触りたかったんです」
沈黙。
「結城さんの血管に触れたくて」
再び沈黙。
私は恐る恐る彼の顔を覗き込んだ。
鳩が豆鉄砲を食らったような表情になっている。
(そりゃ、そうなりますよね! 引きますよね!)
「だから言いたくなかったんです!」
私は顔から湯気が出るんじゃないかってほど顔が熱くなる感覚があった。
「これで満足ですか?」
私はきっと結城さんを睨み付ける。
結城さんはゆっくりと膝を元に戻し、腕もどけた。
「血管?」
「はい」
「俺の?」
「はい」
「どういうこと?」
私は結城さんの腕を指さした。
残念ながら、こちらからは見えないが今はそれがありがたい。
「私、あなたがここに就任してきてから、あなたの血管を触ってみたい衝動にかられているんです」
「へ?」
結城さんから間抜けな声がでた。
「もうだから言いたくなかったんです」
次の瞬間、結城さんはよろよろと後ろに下がり、机にぶつかった。
「なんだよ」
そう言ってこめかみを親指と中指で押さえる。
血管がこちらに向いて私は少しドキッとしてしまうが、今はそれどころではないと目線をすぐに反らせた。
結城さんは腕を回して自分の血管を見つめる。
「血管ってこれ?」
「はい、結城さんって夏は半袖のシャツだし、今の時期は長袖だけど室内が暑いとそうやって腕まくりしてるじゃないですか。昨日の飲んでいる時もまくっていて」
「暑がりですからね」
「私の席でエクセルとかを教えてくれる時とか、いつも見えるというか」
私は自分で言っていて、どんどん恥ずかしくなっていく。
「それでこの前、寝ている時が一生に一度、訪れたチャンスだと思って。結局、触れませんでしたけど」
そう言うと結城さんは腕を私の前に突き出した。
「触れば?」
「え?」
「触りたいんですよね? どうぞ、好きなだけ」
「いいんですか?」
「俺の気が変わる前に。最後のチャンスですよ」
「ありがとうございます!」
私は結城さんの腕をそっと両手で掴んだ。
するとくすぐったかったのか、ピクリと動く。
「早くしてください」
「す、すみません。では失礼します」
私は右手の人差し指と中指と薬指でぷっくりと膨らんでいる血管に触れた。
「わぁ」
思わず感激の声が出てしまう。
柔らかくぷにぷにしているその感触に感動した。
思わず手首の方から血管をなぞってすーっと腕まで触れる。
「もういいですか」
「はい」
名残惜しかったが、私は手を離した。
「ありがとうございました」
結城さんの顔を見た瞬間、驚いた。
「なんですか?」
「あ、いえ」
結城さんの顔は真っ赤になっていた。
「もう帰っていいですよ」
「え、でも残業」
「そんなのないです、昨日のことをあなたが気にしていると思ったから」
そう言うと結城さんは自分の席に戻っていった。
私は本当にこのまま帰って良いのか、迷っていると「早く帰って下さい。僕はひとりで仕事がしたいので」とぶっきらぼうに言われた。
「すみません、それでは失礼します」
この人が何をそんなにこだわっているのか、意味がわからなかったが、このままでは言うまで逃れられそうもない。
私は一度、ゆっくりを息をすると結城さんから視線を外して答えた。
「血管に触りたかったんです」
沈黙。
「結城さんの血管に触れたくて」
再び沈黙。
私は恐る恐る彼の顔を覗き込んだ。
鳩が豆鉄砲を食らったような表情になっている。
(そりゃ、そうなりますよね! 引きますよね!)
「だから言いたくなかったんです!」
私は顔から湯気が出るんじゃないかってほど顔が熱くなる感覚があった。
「これで満足ですか?」
私はきっと結城さんを睨み付ける。
結城さんはゆっくりと膝を元に戻し、腕もどけた。
「血管?」
「はい」
「俺の?」
「はい」
「どういうこと?」
私は結城さんの腕を指さした。
残念ながら、こちらからは見えないが今はそれがありがたい。
「私、あなたがここに就任してきてから、あなたの血管を触ってみたい衝動にかられているんです」
「へ?」
結城さんから間抜けな声がでた。
「もうだから言いたくなかったんです」
次の瞬間、結城さんはよろよろと後ろに下がり、机にぶつかった。
「なんだよ」
そう言ってこめかみを親指と中指で押さえる。
血管がこちらに向いて私は少しドキッとしてしまうが、今はそれどころではないと目線をすぐに反らせた。
結城さんは腕を回して自分の血管を見つめる。
「血管ってこれ?」
「はい、結城さんって夏は半袖のシャツだし、今の時期は長袖だけど室内が暑いとそうやって腕まくりしてるじゃないですか。昨日の飲んでいる時もまくっていて」
「暑がりですからね」
「私の席でエクセルとかを教えてくれる時とか、いつも見えるというか」
私は自分で言っていて、どんどん恥ずかしくなっていく。
「それでこの前、寝ている時が一生に一度、訪れたチャンスだと思って。結局、触れませんでしたけど」
そう言うと結城さんは腕を私の前に突き出した。
「触れば?」
「え?」
「触りたいんですよね? どうぞ、好きなだけ」
「いいんですか?」
「俺の気が変わる前に。最後のチャンスですよ」
「ありがとうございます!」
私は結城さんの腕をそっと両手で掴んだ。
するとくすぐったかったのか、ピクリと動く。
「早くしてください」
「す、すみません。では失礼します」
私は右手の人差し指と中指と薬指でぷっくりと膨らんでいる血管に触れた。
「わぁ」
思わず感激の声が出てしまう。
柔らかくぷにぷにしているその感触に感動した。
思わず手首の方から血管をなぞってすーっと腕まで触れる。
「もういいですか」
「はい」
名残惜しかったが、私は手を離した。
「ありがとうございました」
結城さんの顔を見た瞬間、驚いた。
「なんですか?」
「あ、いえ」
結城さんの顔は真っ赤になっていた。
「もう帰っていいですよ」
「え、でも残業」
「そんなのないです、昨日のことをあなたが気にしていると思ったから」
そう言うと結城さんは自分の席に戻っていった。
私は本当にこのまま帰って良いのか、迷っていると「早く帰って下さい。僕はひとりで仕事がしたいので」とぶっきらぼうに言われた。
「すみません、それでは失礼します」