御曹司社長は恋に臆病な契約妻を極上の愛で囲う
(息が苦しい……)

 次第に意識が朦朧とし、小夜莉の足元がふらつく。それでも自分は声を出さなければいけない。

「雅人さん――」

 小夜莉が最後の力を振り絞り、そう大きな声で呼んだ時……。
 バンッと大きな音を立てて入口の扉が開かれた。蹴り開けられた扉から飛び込んできたのは雅人だ。その顔を見た途端、小夜莉の瞼に一気に涙が溢れ出てくる。

「小夜莉!」

 雅人はそう叫ぶと、男たちに腕を掴まれた小夜莉に目を向けはっと息を呑む。そして羽交い絞めにされ、口を押えられる小夜莉を見た瞬間、雅人は見たことがないほど恐ろしい顔つきに変わった。

「お前たちは、自分が何をしているかわかってるのか!」

 雅人の恐ろしいほどの低い声が響き渡る。同じく扉から飛び込んできた司が「くそっ」と声を上げた。
 雅人は迷わず小夜莉のもとに向かってくると、小夜莉の腕を掴む男の顔面を蹴り上げた。ひるむ男をすかさず司が締め上げる。それを合図にするかのように、警備員たちが一斉になだれ込み、美幸や所長も取り押さえられた。

「雅人さん……」

 掴まれていた腕がするりと外れ、小夜莉は倒れこむように雅人のもとに向かう。

「小夜莉!」

 雅人は腕を広げると、小夜莉を力いっぱい抱きしめた。
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