御曹司社長は恋に臆病な契約妻を極上の愛で囲う
 母との食事会の時、雅人がこの話をしたのは、そういう理由だったのかと初めてわかった。

「小夜莉はまだ新人なのに立派だと思った。だから俺は自分の知識で小夜莉を助けたいと思った。一緒に働いたのは一週間だったが、俺が恋に落ちるまでには十分な時間だったんだ」

 雅人の言葉に、小夜莉の頬が一気に熱くなる。あの時は必死だった。工場長も所長も調査する意思はないと知った小夜莉は、たったひとりで調査をすると決めた。その時側にいてくれたのがまさか雅人だったとは思わなかった。

(それに私に好意を寄せてくれていたなんて)

 頬を染めながら、小夜莉は(でも……)と首を傾げる。それであれば雅人は小夜莉のことを知っていたはずだ。なぜ今回最初に出会ったとき、雅人は初対面のようにふるまったのだろうか?

「あの、初めて研究室で顔を合わせた時、雅人さんは私の名前を知らなかったですよね?」

 不思議そうな顔をする小夜莉に、雅人は楽しそうに笑い声をあげる。

「だってあの時、何度聞いても小夜莉は顔を背けるだけで、何も教えてくれなかっただろう?」

 雅人が小夜莉の頬をきゅっとつねって、小夜莉は「きゃ」と軽く悲鳴を上げる。確かにそう言われれば納得だ。

「まぁでも今回、小夜莉が男性恐怖症だから、あぁいう態度を取ったんだってわかったよ。それでも俺と一緒に調査を進めたのは、住民のひとたちのためだったんだなってわかった」

 しみじみと声を出す雅人に、小夜莉は小さく肩をすくめる。
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