御曹司社長は恋に臆病な契約妻を極上の愛で囲う
 すると雅人が小夜莉に向き直る。

「だから俺は化学の社長を希望したんだ。君を見つけるために」
「え?」

 小夜莉は信じられない気持ちで声を出す。雅人はほほ笑むと、小夜莉の手を取りながらうなずいた。

「化学の社長になれば君を見つけられると思った。君にもう一度出会うことが俺の最大の目的だったんだ」

 雅人の力強い言葉に小夜莉の瞳が潤みだす。五年もの時間が経っても、こんなにも自分のことを想い続けてくれるひとがいるなんて、思いもしなかった。

「小夜莉と再会した日、俺は君が男性恐怖症を抱えていることを初めて知った。そして、それをおしてでも母親のために結婚したいと思っていることも。だから強引に契約結婚を迫ったんだ。真面目で誠実な君であれば、絶対に受けると思って」

 雅人は言葉を続ける。

「でもその結果として、君を危険にさらしてしまったのは事実だ。それだけは悔しくてたまらないよ」

 下を向き、怒りを抑えるように拳を握りしめる雅人の手に、小夜莉はそっと自分の手を重ねる。

「そんなことはありません。私はこうして恐怖症を乗り越えることができた。そして生まれて初めて、心から愛しいと想えるひとに出会えたんです」

 小夜莉は涙をぬぐうとにっこりとほほ笑んで雅人を見上げる。

「小夜莉……」

 雅人が名前を呼び、優しく身体を引き寄せる。
 雅人の吐息を間近に感じ、小夜莉の鼓動は次第にドキドキと大きな音で鳴り響く。
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