御曹司社長は恋に臆病な契約妻を極上の愛で囲う
「雅人さん」

 小さなつぶやきに応えるように、抱き寄せる腕に力がこもる。

(あぁ私は、雅人さんが好きでたまらないんだ……)

 男性には恐怖しか感じなかった自分が、こんなにも相手を愛しいと想える。これが本物の愛なのかも知れない。
 そう小夜莉が心で思ったとき、さらに雅人の顔が近づく。小夜莉が目を閉じ、雅人の唇がわずかにかすめた時……。

 コンコンと大きなノック音が病室内に響いた。
 ビクッと身体を揺らした小夜莉は、慌てて顔を上げる。

「はい」

 雅人が取り繕うように固い声を出すと、しばらくしてそっと扉が開かれた。

「失礼しまーす。小夜莉ちゃんの様子はどう?」

 そう言いながら遠慮がちに顔を覗かせたのは司だ。その顔を見た瞬間、雅人が深くため息をつくのが伝わる。思わず小夜莉もぷっと噴き出し、くすくすと笑いだしてしまった。

「あっれー? 結構元気そう?」

 肩を揺らして笑うふたりを見て、司がとぼけたような声を出す。でもお互いの手をつないだままの小夜莉と雅人の姿を見た途端、司はぎょっと大きく身体をのけ反らせた。

「え⁉ ごめん。もしかして、邪魔した?」

 慌てて両手を合わせる司に、雅人はふんと鋭い目を細める。

「司、後でわかってるんだろうな」

 わざとらしく低い声を出す雅人を見ながら、小夜莉はまたくすくすと笑ってしまう。でもすぐに司は「そうそう」と急にまじめな顔になると、雅人に近寄った。
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