御曹司社長は恋に臆病な契約妻を極上の愛で囲う
 それから小夜莉と雅人は実家で母親の手料理を食べた。母親はまるでレストランのシェフかと思うほど料理がうまく、小夜莉はいくつかレシピを教えてもらいメモを取ったりした。はじめにここに来た時とは全く違う心持で終始和やかに過ごし、両親の笑顔に見送られながら実家を後にしたのだ。

 マンションに着いたときは夜の二十二時を過ぎたあたりだった。雅人と心を通わせてからはじめて帰ってくる部屋に、小夜莉はドキドキとしながら靴を脱ぐ。

「父とは何の話をしていたんだ?」

 すると先に上がっていた雅人が振り返った。
 首を傾げる様子に小夜莉は困ったように目線を上げる。どこまで伝えてよいものだろうか。父親は小夜莉にだけこっそり教えてくれた気もするのだ。
 すると戸惑う小夜莉にほほ笑みながら、雅人が「まぁいい」と言った。

「父のあの顔を見たら、小夜莉を認めていることは一目瞭然だ」

 にっこりと笑う雅人に、小夜莉は次第に熱くなる頬を上げる。今日、雅人の両親に正式に結婚を認めてもらえた。つまりは、この先もふたりの結婚生活は続くということだ。

(でも、どんな暮らし方になるの?)

 小夜莉は上目づかいで前を歩く雅人の背中を見つめる。
 今までは契約夫婦として、お互いに干渉せずに過ごしてきた。そして小夜莉の男性恐怖症もあり、雅人は必要以上に小夜莉に近寄ることはなかったのだ。でも今は……。

(もっと雅人さんに近づきたい)

 小夜莉がそう思ったとき、自分の寝室の前で足を止めた雅人がこちらを振り返る。雅人は珍しくやや頬をピンクに染めながら、小夜莉にそっと手を差し出した。
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