御曹司社長は恋に臆病な契約妻を極上の愛で囲う
 小夜莉のスマートフォンケースには今もふたつの貝のストラップがついている。小夜莉はこれを、いつか雅人に渡したいと思っていたのだが、なかなかタイミングが見つからなかったのだ。小夜莉はストラップを外すと、そっと雅人に差し出す。
するとそれを見た雅人が、ストラップごと小夜莉の手を両手で包み込んだ。

「小夜莉、せっかくだからもっとロマンチックにしてもいいか?」
「え?」

 不思議そうに首を傾げる小夜莉の前で、雅人はストラップを自分と小夜莉の手の平にひとつずつ置く。そして「少し寒いけど」と言いながら、小夜莉の首元のストールを外すと、ふわりと頭にかけた。
 小夜莉ははっと顔を上げる。ストールがまるでウエディングベールのようなのだ。

「もしかして……」

 そう声を出す小夜莉の手を握ると、雅人がにっこりとほほ笑んだ。

「もう一度ここで、小夜莉に誓いたいんだ」

 その言葉を聞いた途端、小夜莉の心臓がドキドキと音を立てだす。あの時はまさか自分が雅人をこんなにも好きになるとは思わなかった。お互いの目的のため、愛も恋もない紙切れ一枚の契約結婚なのだと。

(でも今は違う。私たちはお互いを思いやり、時には尊敬して愛し合う、本当の夫婦になるんだ)

 小夜莉は静かにうなずくと、雅人に握られた両手にきゅっと力を込める。
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