御曹司社長は恋に臆病な契約妻を極上の愛で囲う
(可哀想なコ……? 私のこと、そんな風に見てたの……?)

 直志は小夜莉の男性恐怖症に理解があると思っていた。それなのに本心では可哀想だと思っていたのか。自分がそんな目で見られていたことがショックでたまらない。
 すると女性がにやりと目を細めると、動揺する小夜莉に顔を寄せた。

「あのねぇ、男って女には心も身体も癒してほしいものなの。この意味わかる?」

 耳元でささやく女性に、小夜莉の視線が揺れる。

「つまり、あなたみたいに、すぐきゃあきゃあ言ってる女じゃ役不足ってわけ」

 勝ち誇ったようにふんと鼻を上に向ける女性に、小夜莉は膝からぐらりと床に崩れ落ちた。
 男性恐怖症のせいで今までだって散々辛い思いをしてきた。
 それなのに、こんなにみじめな思いをするなんて思ってもみなかった。

「浮気してたってこと……?」

 俯いたまま声を絞り出す小夜莉に、直志は何も答えない。
 すると女性がくすくすと笑いながら、勝ち誇ったように小夜莉の前に立った。

「違うわよ! 直くんにとってはあたしが本命なの。あんたとの付き合いはもううんざりなんだって。だってあなた……キスすらまともにできないんでしょう?」

 きゃははと笑い声をあげる女性を、小夜莉は愕然として見上げる。

(あぁやっぱり、私には恋愛なんて無理だったんだ……)

 直志と付き合う前だって、散々悩みぬいた。
 でもこのひととだったら、前に進めるんじゃないと思って勇気を出したのに、結局はこのざまだ。
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