御曹司社長は恋に臆病な契約妻を極上の愛で囲う
(やっぱりすごいお嬢様だったんじゃない)
 小夜莉は愕然とした顔を上げる。

「雅人さん、本当にお見合いを断って大丈夫だったんですか? だってNKRだなんて……」

 小夜莉のせいで家同士の重大な話を台無しにしてしまっては大変だ。
 すると眉を下げる小夜莉に、雅人は「全く興味がない」と言い放った。
 その声に小夜莉は小さく目を開く。
 出会ってからここ数時間の雅人を見ていて、このひとは御子柴グループの御曹司というだけでなく、自分の確固たる想いを秘めて、それに基づいて考え行動しているような気がするのだ。

(決して自分の立場に胡坐をかくようなひとではない……?)

 小夜莉がそう思った時、ふと雅人がこちらを振り返った。

「それより、ここで何を話してたんだ?」
「えっと、あの、ご挨拶を……」

 ごまかすように声を出した小夜莉はそっと顔を俯かせる。
 “どうも美幸は雅人に失恋したらしい”などと、他人の恋愛感情を小夜莉が話すわけにはいかないだろう。
 口をつぐむ小夜莉に、雅人は司と顔を見合わせた後「そうか」とだけ声を出す。

「とりあえず、今日はもう遅い。君のマンションまで送って行こう」

 雅人はそう言うと、くるりとエレベーターに向かって歩き出した。
 その姿に小夜莉は慌てて顔を上げる。

「そんな! 社長にそこまでしていただいては申し訳ないです。私は電車で帰りますので……」
「まぁまぁ。甘えちゃってもいいんじゃない? 婚約者なんだし」
「そうだ。君は俺の婚約者だからな」

 にんまりと笑う司に合わせるように、雅人も楽しそうに声を上げる。
 優しい笑顔を見せる雅人に、小夜莉は戸惑いながらも静かにうなずいた。
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