御曹司社長は恋に臆病な契約妻を極上の愛で囲う
「ちょっと、何を言って!」
「もうお互いの親も納得してるんだ。何ら問題はないだろう? さっきも父親から、早急に日取りを決めろと電話がかかって来たんだ」

 畳みかける雅人に、小夜莉は開いた口がふさがらない。確かにこの前はお互いに婚約者を演じ合った。でもそれは、あくまであの時の状況だったからであって、お互い好きでもなければよく知りもしない相手と急に結婚などできるはずがない。
 しかも相手は自社の社長で、御子柴グループの御曹司だ。どう考えても小夜莉とは釣り合わない。

(……それに私は男性恐怖症だってある)

 小夜莉は気を取り直すと、ぐっと身体を起き上がらせる。

「あの場の話をうのみにして、本当に結婚だなんて言われても困ります」

 小夜莉は下を向くとぐっと両手を握り締めた。

「それに、社長だってご存じでしょう? 私は男性が怖いんです……結婚なんて、私には到底無理なんです……」

 そう言った小夜莉の胸にチクリと痛みが走る。小夜莉をあざ笑うかのように去って行った直志と女性の顔が思い浮かんだ。
 するとうつむく小夜莉の前に、雅人が優しそうな顔を覗き込ませる。

「結婚とはいわば契約だ。俺と君。お互いのメリットになる契約を結ぼう」
「ど、どういう意味ですか?」
「お互いの目的が達成されるまでの契約結婚ってことだ」
「契約結婚……?」

 訳がわからず首を傾げる小夜莉に、雅人が真っすぐな瞳を向ける。
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