御曹司社長は恋に臆病な契約妻を極上の愛で囲う
「君は俺を使って恐怖症を克服すればいい。俺は決して君が怖がるようなことはしないと誓う。そして俺は俺の目的を果たす」
「目的? それが達成されたら?」
「その時は、お互いあと腐れなく別れよう」

 雅人の低い声が響き、小夜莉の瞳が小さく揺れた。つまりこれは愛も恋も関係ない、ただお互いの目的を達成するまでの契約結婚。
 小夜莉は目の前の雅人の顔をじっと見つめる。
 この前の様子からして、雅人が誠実な人物であることはわかっている。だからか小夜莉も、直志と一緒にいる時よりも雅人の隣にいる時の方が安心できたのだ。確かに雅人が相手であれば、小夜莉の男性恐怖症も克服できるかも知れない。
 でもだからと言って気軽に結婚できる相手でないことはわかりきっている。雅人は御子柴グループの御曹司なのだ。
 それに雅人の目的は何だというのだろう? 御子柴化学の社長になる以外にも何か目的があるのだろうか?

「じゃあ、社長の目的を教えてください。私はNKRのお嬢様みたいに地位も財産もありません。ただ研究だけをしてきた人間です。そんな私と結婚して、社長に何のメリットがあるっていうんですか?」

 小夜莉は硬い表情で静かに口を開く。
 雅人はしばらく口を閉ざしていたが、急に今までにない程厳しい顔を向けた。

「この研究所には裏切り者がいる。それを炙り出すのが俺の目的だ」
「う、裏切り者……⁉」

 小夜莉は驚いて目を見開くと、慌てて自分の口元を両手で押さえる。想像もしなかった答えが返って来て一瞬思考が停止した。突然雅人が化学の社長に就任した裏に、そんな事情が隠されていたなんて思いもよらなかった。
< 43 / 135 >

この作品をシェア

pagetop