御曹司社長は恋に臆病な契約妻を極上の愛で囲う
 触れられた部分がじんじんとして熱い。そして同じくらい胸の奥がじんじんと疼きだしたのだ。

(私、どうしちゃったの……?)

 小夜莉は戸惑うように下を向く。今までだったら、腕を掴まれた瞬間、身体が硬直して相手を拒否して突き飛ばしていたはずだ。でも雅人に腕を掴まれた時、確かに身体は強張ったがそれは拒否から来るものではなかった気がした。

「君には触れないって言ったのに。ごめん。怖かったよな」

 するとじっと下を向く小夜莉に雅人が再び優しい声を出す。
 きっと雅人は前のように、小夜莉が恐怖に怯えていると思ったのだろう。でも小夜莉自身にも今の自分の状態を説明する言葉が見つからない。
 すると何も答えない小夜莉に、雅人は小さく息をつくと、再びリビングの方へと戻って行ってしまった。
 小夜莉はぼんやりとキッチンの方から聞こえる水道の音に耳を傾ける。雅人はコップで水を飲んだのか、カチャリとグラスが置かれる音が聞こえた。

 それからしばらくして雅人は用事があるからと外に出て行った。
 小夜莉はひとりきりになった部屋で、ふかふかのベッドにそっと腰を下ろす。
 まだじんじんと熱い腕を触りながら、明らかに自分が戸惑いだしているのに気がついた。
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