御曹司社長は恋に臆病な契約妻を極上の愛で囲う
「え……」

 小夜莉ははっと息を止めて雅人を見つめる。雅人は何も言わずにただじっと小夜莉の瞳を見つめている。シーンと静まり返ったリビングで、ふたりの視線が合った。

「あ、あの……どうかしましたか?」

 たまらずに声を出した小夜莉は、雅人の指先に触れた自分の手を反対の手でぎゅっと握りしめながら下を向く。その様子を見て、雅人から小さく息が漏れるのが聞こえた。

「いや、何でもない。夕食美味しかったよ。ありがとう」

 雅人はそう言うと立ち上がり、リビングの扉へと向かう。
 その後姿を小夜莉はぼんやりと見つめた。すると雅人が足を止め「そういえば」と振り返る。

「急だが来月、父が俺たちの結婚披露パーティーを開くと言っている」
「パーティーですか?」

 小夜莉は戸惑ったように視線をさまよわせた。自分たちは契約結婚で、すぐにでも別れるかもしれないのに、結婚披露のパーティーなど大げさなことをしてもいいのだろうか?
 すると小夜莉の不安そうな顔に気がついたのか、雅人が申し訳なさそうに眉尻を下げた顔を向けた。

「父は言い出したら聞かない質なんだ。すまないが付き合ってほしい」

 小夜莉はその言葉を聞いて、ようやく静かにうなずく。
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