御曹司社長は恋に臆病な契約妻を極上の愛で囲う
 するともじもじする小夜莉の手元を見て、雅人が「それは?」と不思議そうに声を出した。

「先日のパーティーの時、NKRのお嬢様から結婚祝いにといただいて」
「NKRの?」

 小夜莉が小瓶を差し出すと、雅人は手に取ってまじまじと小瓶を見ている。

「非売品の媚薬だっておっしゃってたんですが、成分を見る限り普通の香水で……。あの、媚薬って何でしょう?」

 小夜莉が上目づかいで見上げると、雅人はやや目を丸くした後、再び瓶を見つめる。
 雅人はしばらく考え込んだ後、封をしている紙のラベルを切ると、ガラスの蓋に手をかけた。丸い飾りのついた蓋はキュッキュと音を立てた後、ぽんと開かれる。
 ふわっとラベンダーのような、爽やかな香りがバスルームに広がった。

「やっぱり普通の香水でしょうか?」

 小夜莉がそう声に出したとき、小瓶を顔に近づけて香りを嗅いでいた雅人が急に胸を押さえる。

「ま、雅人さん⁉」

 見ると雅人の息はみるみるうちに荒くなり、頬はやや紅潮しだしているではないか。
 小夜莉は慌てて雅人に駆け寄ると、雅人の手を取る。手首に触れると脈が速いような気がした。

(どうしたらいいの……)

 小夜莉の心を一気に不安が押し寄せる。雅人に何かあったら大変だ。

(とにかく休ませた方がいい)

 小夜莉はそう考えると、苦しそうにしている雅人の顔を見上げる。
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