御曹司社長は恋に臆病な契約妻を極上の愛で囲う
「雅人さん、すぐリビングに移動しましょう。私につかまってください! 」

 小夜莉はそう叫ぶと、雅人の腕を自分の肩に回し、抱きかかえるような態勢になる。そのまま肩で息をする雅人を連れて、リビングへと向かった。
 密着させた身体からは雅人の熱が直接伝わってくる。その温度が徐々に上がっている気がして、小夜莉は不安でたまらなくなった。

(私が雅人さんに媚薬を渡したから……)

 静かな廊下を進みながら、小夜莉は今にも泣きだしそうな顔を上げる。目の前の雅人から熱い息がもれ、見上げた小夜莉の額に当たった。

「雅人さん、大丈夫ですか? 苦しくないですか?」

 小夜莉は何度もそう声をかけながらリビングに入る。そのまま大きなソファの前に来ると、雅人をゆっくりと座らせた。クッションを頭に当てて身体を横たわらせる。小夜莉は祈るように雅人の手を握りしめた。
 雅人は眉根を寄せながら、熱っぽい眼差しで小夜莉を見ている。小夜莉は片方の手を伸ばすと、雅人の額や頬にそっと触れた。触った感じから、熱はなさそうで少し安心する。

「今、お水を持ってきますから」

 そう言って小夜莉が立ち上がろうとしたとき、握った雅人の手にぐっと力がこもる。

「え……」

 小夜莉がはっと振り返ると、くくくっと雅人の肩が小刻みに揺れだすのが見えた。その揺れは次第に大きくなり、しまいには声を上げて笑い出すではないか。
 小夜莉は何が起こったのかわからず、きょとんとしてしまう。
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