御曹司社長は恋に臆病な契約妻を極上の愛で囲う
「あの日から、やっとここまで来た」
雅人は小さくつぶやくと、五年前の事を思い出す。
その頃雅人は御子柴の本社に籍を置き、父のそばで様々な仕事を手伝っていた。それは経営に関わることから、各グループ企業の管理まで様々だった。
そんなある日、御子柴化学の地方工場で近隣住民とのトラブルが起きているという報告が入った。詳細を聞くとかなり深刻な内容だったが、それに反して現場の動きは鈍かった。このままでは御子柴グループ全体の信用問題にもなりかねない。事態を重く見た雅人は、状況確認のため自ら問題の工場へと向かった。
その時出会ったのが、大きな黒縁のメガネをかけ、一切顔を上げない若い女性の研究員だったのだ。彼女は黙々とひとりで水質検査を進めていた。住民を安心させたいのだと言って、たったひとりで調査を進める姿を見て、雅人は自分にも手伝わせてほしいと申し出た。彼女は酷く戸惑っていたが、雅人の説得にようやく首を縦に振ってくれたのだ。
(一緒に調査を進めるうち、俺は彼女の仕事に対する姿勢を知った。とても尊敬できる女性だと思った。そしてひた向きな彼女に心を奪われた……)
雅人は息をつくと顔を上げる。
調査は一週間ほど行ったと思う。雅人は何度か名前や所属を尋ねたが、彼女は一切何も答えてくれず、顔もあげてくれなかった。
ただひとつ、白い研究着のポケットから覗くスマートフォンについたストラップだけが、彼女自身のものとして雅人の記憶に残ったのだ。
雅人は小さくつぶやくと、五年前の事を思い出す。
その頃雅人は御子柴の本社に籍を置き、父のそばで様々な仕事を手伝っていた。それは経営に関わることから、各グループ企業の管理まで様々だった。
そんなある日、御子柴化学の地方工場で近隣住民とのトラブルが起きているという報告が入った。詳細を聞くとかなり深刻な内容だったが、それに反して現場の動きは鈍かった。このままでは御子柴グループ全体の信用問題にもなりかねない。事態を重く見た雅人は、状況確認のため自ら問題の工場へと向かった。
その時出会ったのが、大きな黒縁のメガネをかけ、一切顔を上げない若い女性の研究員だったのだ。彼女は黙々とひとりで水質検査を進めていた。住民を安心させたいのだと言って、たったひとりで調査を進める姿を見て、雅人は自分にも手伝わせてほしいと申し出た。彼女は酷く戸惑っていたが、雅人の説得にようやく首を縦に振ってくれたのだ。
(一緒に調査を進めるうち、俺は彼女の仕事に対する姿勢を知った。とても尊敬できる女性だと思った。そしてひた向きな彼女に心を奪われた……)
雅人は息をつくと顔を上げる。
調査は一週間ほど行ったと思う。雅人は何度か名前や所属を尋ねたが、彼女は一切何も答えてくれず、顔もあげてくれなかった。
ただひとつ、白い研究着のポケットから覗くスマートフォンについたストラップだけが、彼女自身のものとして雅人の記憶に残ったのだ。