傷付いた心を癒すのは 〜男性が苦手な私の心を癒してくれたのはお隣さんでした〜
その日の夜。
私は家に帰ると、ベランダに直行して、平べったいサンダルに足を滑り入れた。
今日は朝から大変だった。
事前の相談もなく急に新しい案件を振られ、ちょっとしたトラブルもあって。かと思えば、突然会議に呼ばれて。
本当は定時で帰宅したかったのに、もう九時前だ。
風で物干し竿の右側に寄ってしまった洗濯物を回収し、ベッドの上にどんどん積み上げていく。
今日は風が強いようで、いくつかの洗濯物が下に落ちていた。
(あーあ、せっかく洗ったのに……)
すっかり泥だらけになった洗濯物を見て溜め息をつきながら、身を屈めて一枚ずつ回収していく。
すると、一際強い風が吹いて、隣からビュンッと何かが飛んできた。
「わっ!」
思わずキャッしてしまったそれを確認したのと同時に、隣から「すみません!」と声が聞こえてくる。
ベランダを仕切る薄い板から身を乗り出すようにして顔を覗かせたのは、数日前に引っ越してきた片瀬さんだった。
「ごめんなさい。俺の洗濯物、そっちに行っちゃったみたいで……」
「この青いタオル……ですよね?」
「それです、助かりました」
相変わらず、もったりとした重い前髪に黒縁眼鏡を掛けた片瀬さんがこちらに手を伸ばしてくる。